東京オリンピック開幕(2)/学員時報515号

 きょう7月27日は本来ならば、東京オリンピックを幕張メッセに見に行く予定でいたが、無観客大会になった。会場までは自宅の最寄り停留所から千葉シーサイドバスでゆき、期間中は一部路線短縮しているバスを海浜幕張駅で降りて、徒歩で会場へ向かうことにしていた。種目はテコンドーである。父が生きていたらぜひ見せてあげようとの思いだったが、果たせなかった。

 中央大学から学員時報515号(2021年7月夏号)が郵送されてきた。「学員」という語は中大独特の語法で、平たく言うと同窓会にあたる。司馬遼太郎氏の「街道を行く」の<神田界隈>の中で、中大と学員という用語の関係について考察したくだりがある。

 タブロイド版の機関誌のなかに、「ああ五輪 円谷幸吉君の思い出」(円は旧字体)と題する一文が載っていた。書いたのは日本作詞家協会会員の赤池三男さん(昭42商卒)。

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 学員時報515号「ああ五輪 円谷幸吉君の思い出」より。

 1964年東京オリンピックの最終種目だったマラソンは、10月21日国立競技場と調布の飛田給との間の甲州街道上で競われた。日本代表だった円谷幸吉は、優勝したエチオピアのアベベに次いで第2位で国立競技場のトラックに姿を現した。しかし 残り200mのところでイギリスのヒートリーに抜かれて第3位となった。まさに歴史に残る大ドラマだった。

 円谷選手が中央大の卒業生だったとは今回はじめて知った。書かれた赤池さんともども昭和38年に中大二部に入学された。当時の中大は一般的に「苦学生」のイメージがついていた。みんな昼間は働きながら、夜に大学に通っていた。夕方6時過ぎのお茶の水駅は東京周辺から集まってくる中大の勤労学生で朝以上に混雑していたのである。

 たしかに、私が中学生だった時代、教育実習にやってきた中大生はツメ襟の学生服を着ていた。我々と一緒にいると遠目では区別がつかなかった。その中で貧血で倒れた人が印象に残っている。いま思うと食べるものも食べずに教職課程と教員採用試験をめざしていたのであろう。指導教諭のS先生も中大OBだったので事情は詳しかったに違いない。ちなみに当時の東京都の教員採用試験のトップは中央大であった。

 学生運動華やかりし頃だったので、大学周辺では機動隊と学生との衝突が頻繁に起きた。お茶の水には中大以外にも明治や日大などもあったので大変な騒動だった。機動隊には夜は大学2部に通っている警察官が多数いた。衝突が起きると、機動隊も全学連も同じクラスの学生同士だったなどという話は枚挙に暇がない。

 記事を寄せた赤池氏は長野県の高校を卒業後、大蔵省税務大学校で1年研修後地方の税務署に配置された。しかし、学費を貯めて23歳で中大商学部の2部へ入学された。円谷選手も福島の高校を卒業後、自衛隊に入隊。大学で学びたい願望が強く練馬駐屯地に配属変えとなって、やはり23歳で中大経済学部へ入学した。二人は学部は違っても単位以外の科目を聴こうと、大教室で知り合いになったという。しかし、盗講?は大学当局の知るところとなり、学務課に呼び出されたという。

 でも当時の大学はこのような勤労学生を何とかしようと、逆に育英資金を授与する手続きを取ってくれたそうだ。そして、円谷選手は大学2年時の秋に東京オリンピックに出場するのである。しかし、その円谷選手は次のオリンピック(メキシコ)直前の1968年、練馬駐屯地内でカミソリで手首を切って自死してしまう。当時父母宛に書かれた遺書は、後年ドラマになるほど注目された。赤池氏は実家を訪ねたくだりなどを書かれている。

 このように昭和30~40年代の中央大は、東京六大学などと違って、資格試験と公務員試験に強い大学として名を馳せていた。司法試験では戦後ずっと東大を押さえて合格者数1位、公認会計士も税理士も弁理士も同様だった。都庁をはじめ地方の県庁や市役所なども中大の力は抜きん出ていた。おとなりの大学から「あそこは予備校だ」と揶揄されていたが、法律事務所などでアルバイトしながら司法試験をめざす青年達というのが平均的中大生の姿だった、しかも、同窓生で群れることがなかったので中大の力が誇示されることは少なかった。早稲田の稲門会、慶応の三田会などに対応する中大白門会というような組織はない。なくなった東大の憲法学の泰斗、小林直樹教授が不思議に思われていたことである。

 オリンピックの話題からだいぶ逸れてしまった。資格試験等で持ってきた中大は、21世紀に入ると社会のあらゆる面で劣勢を極めている。1978年以後のキャンパスの多摩移転が原因とする見方が強く、とりあえず看板学部である法学部を再建しようと、都心の文京区へ戻ってくる。神田駿河台という都心の一等地を売却して多摩移転したことで、将来有能な2部学生を逃がしてしまった苦い経験は、半世紀経ってやっと修正されようとしている。

*中央大学のHP

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